「懸垂」を聞いたことがない人はいないだろう。だが、この懸垂と呼ばれるチンニングの本当に正しいフォームを知っている人は意外と少ないのではないだろうか?
チンニングはバーにぶら下がって、体を上に引き上げる動作のエクササイズである。しかし、いざやってみてもうまく背中に効かないということはトレーニングをおこなっている人の中ではよく聞かれる。
チンニングはとても馴染みぶかい種目であるが、やり方次第でその効果は全く変わってくるのである。
広い逆三角形の背中を持っている人は皆、このチンニングの正しいやり方を知っているといっても過言ではないだろう。しっかりと筋肉に効かせるためには、きちんと正しいフォームを理解することが必須なのである。
チンニングの正しいやり方と効果をイラストを使って詳しく説明するので、ぜひ今日から実践してみて欲しい。
目次
チンニングとは
チンニングとはいわゆる「懸垂」のことである。また、その動きから「プルアップ」とも呼ばれる。ベントオーバーローイングと並ぶ上背部の基本種目だ。
バーにぶら下がり、体を引き上げる動作によって背中全体を総合的に鍛えることができる。逆三角形の体を手に入れるための必須種目と言えるだろう。
ただ、このエクササイズはある程度の筋力が必要である。回数がこなせない人は、まずラットプルダウンなどで筋力をつけると良いだろう。
チンニングの効果
逆三角形の背中の外側をつくる
チンニングは多くの筋肉を使うが、特に背中のサイドの幅をつくることができるトレーニングである。
広く握った手幅でチンニングを行うことで、広背筋の側部が強くストレッチされることになる。これによって背中が横に広がるように筋肉が発達するのだ。
広背筋を発達させる
チンニングのメインターゲットとなる筋肉は広背筋である。広背筋は背中の多くを占めているので、この筋肉を鍛えることは背中の大部分を鍛えることになる。
上半身背部の全体を強化できる
広背筋に加えて、その上部に位置している大円筋や、背中の中央にある僧帽筋下部も補助的に使われる。また、インナーマッスルである深部の筋肉も鍛えられる。チンニングは胸、肩、腕など上半身全体を強化できる多関節種目なのだ。
腕を太くする
チンニングはバリエーションによって上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋なども鍛えることができる。とくにアンダーグリップ(リバース)チンニングが最適だろう。チンニングだけで腕を太くすることも、もちろん可能なのである。
停滞することがない
チンニングのバリエーションは数多くある。グリップを変えたり、体の持ち上げ方を変えたり、そのそれぞれで作用する筋肉が変わってくる。変化させることで、競技に合わせて効果を発揮させることもできる。
このことは、長くトレーニングを続けている人にとって飽きることのない種目だということだ。
もし背中のトレーニングで少し停滞していると感じる時は、チンニングのバリエーションをいろいろと試してみて欲しい。
チンニングのやり方
フォーム
両手でバーを握って、ぶら下がる。両肘は軽く曲げるようにする。手幅は肩幅の1.5倍程度が目安である。
胸を張りながら、バーに近づけるように体を上に引き上げていく。あごをバーにタッチさせる感じで引き上げる。このとき、肩甲骨を寄せながら行うのがポイントである。脇を絞り込むようにしても良いだろう。肩はすくめないようにする。
自分のやりやすいスピードで行って良いが、あまり速くしすぎないようにする。速く動作することで反動がつきやすくなるからだ。
腕の力を抜くために、ストラップなどを使うと背中の筋肉に効かせやすくなる。
重量
まずは自重でエクササイズを行えるようにする。物足りなくなれば、後述するようにウェイトをぶら下げてやると良いだろう。
回数
自重をつかっておこなうので、重量の調節ができない。まずは10回3セットできるようになりたい。難しい場合は、ラットプルダウンでまずは筋力を強化しよう。もしジムにアシストテッドマシンがあれば、それを使っても良いだろう。
呼吸法
息を吸いながら、体を引きつけていく。動きの最後、動作が最もつらくなるポイント(スティッキングポイント)を越えたら息を吐くようにする。
追い込み方(フォーストレップ)
自重では物足りなくなってくると、専用の加重ベルトなどを使ってウェイトをつけて負荷を加えるようにする。男性の筋トレ愛好家であれば、総重量100kgを目指したい。
パートナーに手伝ってもらい、足を持ってもらう。こうすることで追い込みができる。組んだ両足首をパートナーに持ってもらう方法や、パートナーの太ももの上に立つようにして動作をおこなう方法がある。また、体全体で反動をつけて追い込む方法もある。
バリエーション
バックベント(スターナム)チンニング
狭めにバーを握って、肩を軸としてお尻を持ち上げる。肩甲骨を寄せながらバーにお腹を近づけていくようにする。動作としては、肩関節を伸ばす伸展の動きで体を引き上げることになる。
このトレーニングは広背筋をフルレンジで強く刺激することができるので、筋肥大効果が大きい。
アンダーグリップ(リバース)チンニング
腕を肩幅に開き、逆手でバーを握る。胸を持ち上げて、あごをバーの高さまで持っていく。やや後傾気味に、体を斜めにして動作を行うのがポイントである。
この動作では腕の筋肉の関与が増えることになる。ひじを曲げる筋肉である上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋などを鍛えることができる。また、広背筋下部への刺激が強まる。
このエクササイズはある程度の筋力が必要である。より簡単に行うには、ハイプーリーを用いて同じ動作をおこなっても良い。
ビハインドネックチンニング
背中が丸まることによって、広背筋に代わって大円筋や僧帽筋に負荷が集中するようになる。
この動作は、肩を極度に外旋(上腕が後方に外旋する)させることになる。これは肩関節の前部に過度の負担がかかる。また、頭を前方に屈曲させるために首の伸筋が伸ばされて、筋肉痛や筋肉疲労の原因となる。これらが原因となって、肩を痛める可能性がある。肩関節の柔軟性のない人はやらないほうが良いだろう。問題が起こらないという人でも、フォームには十分に注意を払っておこなうようにする。
クローズグリップチンニング
バーを握る手の幅を狭くする。グリップの幅は15センチ程度とする。オーバーハンドでも、ニュートラル(左右の手のひらが互いに向き合う形)でも良い。このエクササイズは上腕二頭筋などの肘を曲げる筋肉に効いてくる。
筋力が強くなってきたら、背中を反らせてバーに胸をタッチさせるようにしてみる。こうすると背中に強烈な刺激を与えることができる。
斜め懸垂
かかとを床につけることによって、ウェイトが軽減される。斜め懸垂は初心者や女性でも取り組みやすい。公園などにある背の低い鉄棒を使っても良いだろう。このときも、胸を引き寄せていくように動作する。
チンニングのNG
力を抜きすぎる
バーにぶら下がった姿勢の最初のポジションで、力を抜きすぎてしまうと怪我の危険性が高まる。腕が抜けそうな感じがするほど力を抜かず、少し緊張させた感覚を保つようにする。
肩が上がってしまっている
肩をすくめるようにしてしまうと、僧帽筋や腕に主に効いてしまう。これでは広背筋がターゲットにならない。
背中が丸まっている
背中が丸まると、上腕二頭筋などの腕の筋力を使って体を上げるような動作になりやすい。これでは広背筋や僧帽筋下部への効果は小さくなってしまう。
反動をつける
トップポジションや体を下げきったポジションでも反動をつけない。きっちりと静止してから次の動作に入るようにする。するまた、前後に体を揺らさないこと。勢いをつけると体を持ち上げやすくなるが、筋肉への効果が薄れてしまう。
チンニングの5つのコツ
1. 肩を下げて肩甲骨を寄せる
肩を下げて、肩甲骨を寄せながら体を持ち上げるようにする。肩甲骨を内側に寄せながら下げることを意識すると、広背筋をフルコントラクションさせやすくなる。
肩が上がってしまった状態で動作を行うと、腕や僧帽筋ばかりを使ってしまうことになる。こうすると広背筋には効いてこない。
2. 胸を張って背中を反らす
広背筋には体幹を伸ばす伸展作用もある。ここに効かせるためには、背中をそらしながらバーを引くようにしなければならない。多少きついが、胸を反らせつつ張っていくようにする。体はやや後傾でおこなうイメージになる。
3. ひざを曲げ足を組む
膝を曲げて足を組むようにすると、体のバランスを安定させやすい。また、足を伸ばした姿勢だと反動が生じやすくなるので、それを防止するためにもよい。好みに応じて使うと良いだろう。
4. 肩幅の1.5倍の手幅で握る
グリップは肩幅より広めにとる。目安としては上腕が床と平行のときに、肘が直角になる程度の幅で握ると良い。
5. バラエティをもって取り組む
チンニングはバラエティーに富んだトレーニングである。一種目だけにひたすら取り組むと言うのは、筋肉の成長にとって損である。
2週間から3週間でバリエーションを変えてみると良いだろう。
参考動画
動画を使って解説されているので参考にしたい。
トレーニングが終わったあとは栄養補給を欠かさないこと
トレーニングをした後はプロテインもしっかり補給しておきたい。
日本人はカロリーを抑えすぎるあまりに、体をつくるために必要なタンパク質がキチンととれていない人が多い。
プロテインは余計な脂質や炭水化物を摂取することなくほぼタンパク質のみを補給できる優れたサプリメントだ。
プロテインは良質なタンパク質のかたまりなので、これが原因で太ってしまうということもない。
トレーニングでしっかり体を使ったら栄養補給も怠らないようにしてほしい。
はじめはコスパのいいものを選んでみて続けられるか試してみよう。
まとめ
チンニングは数多くのバリエーションがある背中の基本種目である。しっかりと正しいフォームでこれらをおこなえるようになれば、背中を鍛えあげるのはかなり楽になるだろう。また、特別な器具も必要としないので、取り組みやすい種目でもある。やり方次第で効果の出る部位が変わってくるので、きちんとその作用を理解してエクササイズに励むようにしたい。
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フリーウェイトを使ったトレーニングとしてはベントオーバーローもおすすめである。これはチンニングと同様に、背中の基本種目である。初心者のうちから正しいフォームをしっかり理解して取り組みたい。
マシンを使ったトレーニングとしては、ラットプルダウンがある。これはチンニングがまだ難しい初心者にとっても、背中の筋力アップに効果的な種目だ。チンニングのグリップやバリエーションを適用することもできるので、ぜひやってみてほしい。
また、同じ背中のトレーニングとしてシーテッドロウがある。これは背中の厚みをつくるのに必須の種目だ。
チンニングはプルアップとも呼ばれる。「囚人の筋トレ」は難易度が10ステップに分かれているので、初心者や女性でも無理なく取り組むことができるようになっている。自重をつかったトレーニングなら、これを参考にしてほしい。
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