囚人はいかにしてあの強靭な胸を作っているのだろうか?その答えがプッシュアップ、いわゆる腕立て伏せだ。だがこのプッシュアップはとても奥が深い。正しいフォームと言われても、胸を張ってこれだと答えられる人は少ないのではないだろうか?ここでは、囚人が行っている10ステップのプッシュアップトレーニングを紹介しよう。
鋼のような大胸筋をつくるために
プッシュアップとは
プッシュアップは究極の上半身トレーニングだ。大胸筋や三角筋を鍛えられるのはもちろん、健や関節も鍛えられる。さらに、姿勢を維持するスタビリティーマッスルも鍛えられる。プッシュアップ1つで上半身をくまなく鍛えあげることができるのだ。素晴らしく多くのメリットがあるプッシュアップが、ベンチプレスによって隅に追いやられているという事は悲しいことだ。
プッシュアップの効果
プッシュアップはとても多くの筋肉を使う。正しいフォームで行えば、関節や健、さらに全身の強さや健康にもつながる。インナーマッスルを含めた上半身全体が鍛えられるので、プッシュアップを取り入れているウェイトトレーナーには怪我が少ない。
正しいプッシュアップフォームとは
正しいプッシュアップというのは、人によってだいぶ違っている。やり方についての文献もごまんとある。ここでは、これを一つ一つ検証して厳格なやり方を紹介すると言うよりは、一般的なルールや考え方を共有したい。
- 手は変な角度や場所におかない。
- 胴回りと尻、脚は一直線にする。
- 脚を揃えて行う。開いて行うと負荷が逃げる。
- 肘を伸ばしすぎてロックしない。適度に緊張した状態で。
- 息はゆっくり吸ってゆっくり吐く。
どのくらいの速さでやれば良いのか
クラッピングプッシュアップのように、素早く行うのを推奨する人もいる。これはこれで確かに良い点もある。けれども、これは健や関節を痛めやすい。
メインのセットのプッシュアップはゆっくり行う方が良い。
ゆっくり行うことによって、筋肉に対する負荷が高くなる。これは長時間筋肉を使うことによってトレーニングの全体量が上がるからだ。また健や関節に極端に高い負荷がかからないので、怪我のリスクも少なくなる。
素早く動作を行うプライオメトリックトレーニングは、メインのトレーニングにはしない方が良い。
必要な道具
必ず必要と言うわけではないが、バスケットボールや野球のボールがあれば、沈みこむ深さや位置のサポートになる。これは、1人でトレーニングを行うときにはかなり使える。
唯一必要なのは、バスケットボールと野球のボールだ。高級なものでなくて良い。
ゆっくり体を下ろしていったりするときに、どんな風に床やボールにタッチすればよいのか。これは囚人の中では、「赤ちゃんへのキス」と言われている。体をおろして、赤ちゃんの額へ軽くチュッとキスをする、そして元の位置に戻る。これ以上でもこれ以下でもない。
体を下ろした時に少しだけ止まるのは、反動をつかって元の姿勢へ戻るのを抑止するとともに、筋肉への負荷やコントロール能力を上げることができる。
指先で行うプッシュアップ
もしグリップ力を強化したいのであれば、指先で行うプッシュアップをお勧めする。
これは怪我の危険があるため、必ず以下に説明するステップ1からやって欲しい。
もしあなたが継続してトレーニングして、最後のステップまで行ったときには、あなたの指はとてつもなく強靭なものになっているはずだ。
ただこれは必ずやらなければならないと言うものではない。
プッシュアップ10ステップ
注意点として、ステップはできるだけ最初からやって欲しい。最初の3ステップは多くの人にとっては簡単なものだろう。だが、健や関節を強くするためには、段階を追って順番に鍛えていく必要がある。規定の回数をこなせれば次のステップへ進んで問題ない。
トレーニングは、ステップ1からステップ10まである。初級、中級、上級と進んでいってほしい。
Step 1: 壁プッシュアップ
やり方
足をそろえて手のひらを壁に向ける。腕を肩幅に開き、胸の高さでまっすぐ壁につける。
肩と肘を曲げ、ゆっくりおでこを壁につける。これを繰り返す。
効果
壁プッシュアップはこのシリーズにおける最初のステップだ。多くの人にとって問題なくできるエクササイズだろう。これは肘、手首、肩、またインナーマッスルをやさしくほぐしてくれる。
ゴール
- 初級: 10回1セット
- 中級: 25回2セット
- 上級: 50回3セット
TIPS
ほとんどの人にとってこの動作は問題なくできるだろう。怪我をした人にとっては、良いリハビリになる。
Step 2: インクライン・プッシュアップ
やり方
足を揃えて体をまっすぐにし、傾ける。肩幅に開いた腕で机をつかむ。この時腕はまっすぐにする。(腰ぐらいの高さのしっかりした机やイスを使う。体の角度は45度くらい。)
肩と肘を曲げて、胸の下あたりをゆっくり机につける。これを繰り返す。
効果
ステップ1に続くこのエクササイズは、より自分の体重が筋肉にかかるようになっている。
ゴール
- 初級: 10回1セット
- 中級: 20回2セット
- 上級: 40回3セット
TIPS
45度でできない場合はもう少し背の高い椅子や机を使ってやってみる。そこから段々とと低いものに変えていく。
Step 3: 膝立ちプッシュアップ
やり方
足を揃えて膝をつく。腕を肩幅に開き、まっすぐにして床につく。尻は落とさず、背中と頭と一直線にする。
膝を支点にして、肩と肘を曲げ、床からこぶし1つ分くらいまで体を落とす。それからゆっくり元の姿勢に戻る。これを繰り返す。
効果
俺はビギナーや女性にとってフルプッシュアップまでの重要な動作になる。体重が重い人にとっても良いエクササイズとなるだろう。ウォームアップエクササイズとしても優れている。
ゴール
- 初級: 10回1セット
- 中級: 15回2セット
- 上級: 30回3セット
TIPS
下までさげるのが難しい場合、下げる幅を少なくしてみる。そこからだんだんと深く下げられるようにしていく。
Step 4: ハーフ・プッシュアップ
やり方
膝立ちの姿勢から、手のひらを床につき、足を伸ばす。この時腕はまっすぐに胸の下ぐらいにくるようにする。バスケットボールをちょうどお尻の下ぐらいに来るように置く。足、尻、背中は一直線にする。 (バスケットボールはなくても良いが、1人でやるときには、良い高さの指標になる。)
尻がボールに軽くくっつくまで、肩と肘をゆっくり曲げる。元の姿勢にゆっくり戻る。これを繰り返す。
効果
ハーフプッシュアップは、フルプッシュアップまでのいいエクササイズになる。多くの人は胸より尻が落ちているような間違ったフォームでやってしまっている。これは手首や背筋が弱いからだ。尻を一直線にすることによって、これらを鍛えることができる。
ゴール
- 初級: 8回1セット
- 中級: 12回2セット
- 上級: 25回2セット
TIPS
難しい場合は、ボールを膝のあたりに持ってくる。こうすると、体がより浅い時点でボールにタッチすることになる。だいたい4分の1ほどになるだろう。ここから徐々に規定の位置に変えていく。
Step 5: フル・プッシュアップ
やり方
ハーフ・プッシュアップと同じ姿勢になる。野球のボールを胸の下に置く。
胸をボールに軽くタッチさせる、そこからゆっくり元の姿勢に戻す。これを繰り返す。(ボールはなくても良いが、1人でエクササイズをするときにはちょうど良い深さの指標になる。)
効果
これはいわゆる伝統的なプッシュアップだ。腕、胸、肩にとって一緒に連動する最高のエクササイズである。
ゴール
- 初級: 5回1セット
- 中級: 10回2セット
- 上級: 20回2セット
TIPS
もし難しいのであれば、一つ前のバスケットボールを使ったエクササイズに戻ってみよう。今度はボールを徐々に顎の方へ持っていき、ボールに顎をつける形で回数をこなせるようになれば、もう一度フル・プッシュアップをやってみよう。
Step 6: クロース・プッシュアップ
やり方
フルプッシュアップの姿勢で、手をダイヤモンドの形にし、人差し指の先同士が触れ合うようにする。
体を、手の甲に触れるまでゆっくり下ろす。元の姿勢に戻す。これを繰り返す。
効果
このクロースプッシュアップは、後のワンアームプッシュアップまでにおいてとても重要なエクササイズである。これは肩や胸の柔軟性を上げ、肘や手首の健を鍛えるものだからだ。
ゴール
- 初級: 5回1セット
- 中級: 10回2セット
- 上級: 20回2セット
TIPS
できない場合は、フルプッシュアップに戻ってみよう。そこから徐々に手のひらを近づけていくのだ。高回数でできるようにしてみよう。
Step 7: アンイーブン・プッシュアップ
やり方
プッシュアップの姿勢になり、片側の手をバスケットボールに置く。これは最初は難しいだろう、けれどもやり遂げて欲しい。
胸がどちらかの高い手の甲にタッチするまで、肩と肘を曲げていく。ゆっくりと元の姿勢に戻る。これを繰り返す。
効果
肩のインナーマッスルを鍛えるために、ベストはバスケットボールである。バスケットボールは滑りにくい点でも最適なのだ。
ゴール
- 初級: 5回1セット (両方)
- 中級: 10回2セット (両方)
- 上級: 20回2セット (両方)
TIPS
もしやっていて問題があるようであれば、レンガ等の固定のものを使ってみる。レンガを、1つ、2つ、3つと順番にエクササイズを行なっていけばちょうどバスケットボールと同じ位の高さになるだろう。レンガ3つで20回できたときバスケットボールでやってみよう。
Step 8: 1/2 ワンアーム・プッシュアップ
やり方
ハーフプッシュアップの姿勢と同じようにして、バスケットボールを尻の下あたりに置く。そこから片方の腕を胸の真下に持ってくる。もう一方の横では背中にもっていく。
肩と肘をゆっくり曲げ、バスケットボールに尻のあたりでタッチする。体全体をまっすぐにキープし、体をねじったりしないようにする。ゆっくり元の姿勢に戻る。これを繰り返す。
効果
これはワンアームプッシュアップをするにあたって、バランス能力を養い適切な位置を知るための、とても重要なエクササイズである。
ゴール
- 初級: 5回1セット (両方)
- 中級: 10回2セット (両方)
- 上級: 20回2セット (両方)
TIPS
できない場合は、ボールを膝のあたりにもっていく。そこから徐々に規定の位置にもっていく。
Step 9: てこプッシュアップ
やり方
プッシュアップの姿勢になる。体の外側に置いたバスケットボールに片方の手を置く。この時、手のひらの平の状態で、できる限り遠くにバスケットボールを置く。両腕ともまっすぐ伸ばす。
床からこぶしひとつ分の距離まで体をゆっくりと下ろす。ゆっくりと元の姿勢に戻る。これを繰り返す。
効果
てこプッシュアップは、ワンアームプッシュアップと同じくらい難しい。ワンアームプッシュアップまでのステップとして、最適である。
ゴール
- 初級: 5回1セット (両方)
- 中級: 10回2セット (両方)
- 上級: 20回2セット (両方)
TIPS
難しいときは、ボールをもう少し体の方へ近づける。そこからだんだんと離していく。
Master Step: ワンアーム・プッシュアップ
やり方
床に膝をつき、片方の腕をまっすぐ自分の胸の前に置く。足を伸ばして、尻と背中を一直線にする。もう片方の腕は背中に置く。
顎が、ちょうどこぶし一つ分床から離れるところまで、ゆっくり肩と肘を曲げる。元の姿勢に戻る。これを繰り返す。
効果
正確なフォームのワンアームプッシュアップは、ゴールドスタンダードである。これをマスターしたときには、獣のように強靭な肉体を手に入れられるだろう。
ゴール
- 初級: 5回1セット (両方)
- 中級: 10回2セット (両方)
- エリート: 100回1セット (両方)
TIPS
もし難しい場合は、Step9に戻って正しいフォームで高回数繰り返すこと。
さらに高みへ
順番にトレーニングを積み重ねていくことによって、Step 10は必ずできるようになる。わかっていて欲しいのは、歯を食いしばってトレーニングに取り組むこと、それが他の人が到達できない場所へ行く方法だということだ。
50回2セットができるようになると言う事は素晴らしいことだ。ここでもうすでにフィジカルエリートと言ってもいいだろう。だが、ぜひ100回1セットまで頑張って欲しい。その響きはスーパーヒーローしかできないことのように聞こえる。
もしそれができるようになった後、まだあなたが物足りないとすれば、ワンアームプッシュアップをとてつもなくゆっくりと繰り返すことをやってみてほしい。これは筋肉にさらに負荷を与えてくれるはずだ。
まとめ
以上でプッシュアップシリーズの解説を終わりにする。重要な点をもう一度以下に書いておく。
- ステップは最初から順番に行っていく。
- 「赤ちゃんにキス」をするように、ゆっくり丁寧にエクササイズを行う。
- 難しい場合はTIPS従ってやってみる。
- インナーマッスルなどどこかが痛い場合は無理をしない。
- ボールなどを使う場合は怪我をしないように慎重に取り扱う。
長い道のりかもしれないが、ぜひともやり遂げてみてほしい。全てを終えたその先には、きっとあなたが今まで見たこともない姿が鏡に写っているはずだ。がんばって欲しい。
囚人の筋トレの本が出た!
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